鼻はにおいを嗅ぐという機能はもちろんのこと、呼吸器官としても大切な働きもしています。鼻は肺や器官を守るために、吸い込んだ空気を十分に温め、加湿し、ウイルスや細菌、埃などの侵入を妨害する役目を担っています。また、肺にきれいな空気を送り込むフィルターのような役目もあります。
そんな役目を果たしている鼻が病気になり、吸った空気が浄化されなくなる、口呼吸をすることになると、ウイルスや細菌が喉や肺に直接侵入してしまい、様々な悪影響を与えてしまいます。
このような鼻の疾患でお悩みではございませんか?
アレルギー性鼻炎(花粉症)
花粉やハウスダスト、ダニなどのアレルギー症状の原因となる物質(アレルゲン)が鼻の粘膜に入ることで、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状が現れます。通年性と季節性に分けられ、特定の花粉が多く発生する時期に症状が現れるものが季節性アレルギー性鼻炎で、いわゆる“花粉症”と呼ばれるものになります。
アレルギー性鼻炎に対しては抗ヒスタミン剤(抗アレルギー剤)の内服やステロイド点鼻薬などの薬物療法のほか、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を少量投与して、体を慣らして症状の緩和をはかる舌下免疫療法、また重症のスギ花粉症の方が対象となる抗体医薬(ゾレア)による治療で改善をはかるほか、日帰り手術(コブレーター下鼻甲介手術)、短期入院による鼻中隔矯正術、粘膜下下鼻甲介切除術、後鼻神経切断術などの治療方法もあります。
また症状緩和のためには、マスクの着用や小まめな生活空間の掃除など、アレルゲンの除去も大切になります。
副鼻腔炎(蓄膿症)
頬、顔、目のまわりの骨の部分にある空洞のことを副鼻腔と言い、ここで炎症が起こった状態を副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)と言います。小児副鼻腔炎、急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、好酸球性副鼻腔炎などがあり、このうち好酸球性副鼻腔炎は国から難病に指定されています。
急性副鼻腔炎は、10才以下のお子さんとの接触の多い方(両親、保育園・幼稚園の先生、お孫さんの面倒をみられる祖父母など)は、特にかかりやすいことが知られています。
鼻水、鼻づまり、鼻の痛み、後鼻漏(鼻水が喉に流れる)などの症状が現れて、鼻吸引やネブライザーによる抗生物質の吸引などの治療を行いますが、十分な改善がみられないケースでは手術を検討することもあります。
鼻中隔弯曲症
鼻の穴を左右に分けている壁(鼻中隔)が、極端に曲がっているために、いつも鼻が詰まってしまったり、交互に左右の鼻が片方ずつ詰まったりして、口呼吸やいびき、においが分からない等の症状がある場合を鼻中隔弯曲症と言います。頭痛や肩こり、注意力の減退、鼻血などの症状が出ることもあります。アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎(蓄膿症)が合併すると、その症状はさらに強くなりがちです。
鼻中隔がなぜ曲がるのかというと、鼻中隔は軟骨の板と骨の板とでできており、顔の発育とともに鼻も発育しますが、骨の板よりも軟骨の板の方が発育するので、この差によって弯曲が生じるためです。(打撲等の外傷によって曲がってしまうこともあります)。
軽い鼻中隔弯曲症なら赤ちゃんにも見られますが、お子さんでも大人の方でもほとんどの人が多かれ少なかれ曲がっています。鼻中隔が少し曲がっているからというだけで、鼻の症状がほとんどないのであれば、病気とはみなされません。
しかし、鼻づまりなどの症状がひどいケースや、航空性副鼻腔炎、中耳炎の原因となっている場合、睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療でマスクの装着が困難な場合には、鼻中隔矯正手術を行います。鼻中隔矯正手術では、曲がっている鼻中隔の軟骨・骨を取り除き、まっすぐに矯正します。手術は全身麻酔下で行い、最短1泊2日の入院が必要になります。
鼻茸
鼻茸とは鼻の粘膜にできるポリープで、炎症により鼻の粘膜が垂れ下がることでできます。主な症状は鼻づまりや嗅覚障害で、慢性副鼻腔炎の方によくみられます。
鼻茸を小さくする治療としてステロイドなどの薬物療法が行われますが、十分な効果が得られなかったり、鼻茸が大きく炎症が強かったりするような場合には、手術が必要になるケースもあります。
嗅覚障害
アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などの鼻の病気、またウイルス感染などが原因でにおいを感じにくくなったり、わからなくなったりすることがあり、こうした障害を嗅覚障害と言います。最近では、認知症やパーキンソン病などの神経疾患の初期症状としても注目されています。
嗅覚障害は大きく“気導性嗅覚障害”“嗅神経性嗅覚障害”“中枢性嗅覚障害”に分類され、それぞれで原因が異なります。まずはこうした原因を明らかにしたうえで、それぞれの原因に応じて適切な治療を行って嗅覚障害の改善をはかります。
このような鼻の症状でお悩みではございませんか?
鼻水
水のような鼻水はかぜやアレルギー性鼻炎・花粉症が主な原因です。熱があればかぜ、くしゃみが出る場合はアレルギー性鼻炎の可能性が高いと言えます。黄色っぽく粘度の高い鼻水が出る場合や前頭部や頬部に痛みを伴う場合には、副鼻腔炎が疑われます。特にお子さんは身体の成長や学業への悪影響が出る可能性もありますので、できるだけ早めに受診するようにしましょう。
鼻づまり
鼻づまりは慢性化すると、息苦しい、においがわからない、いびきをかく、睡眠不足になるなど、生活の質を下げるだけでなく、健康への悪影響をおよぼす可能性があります。また、鼻が詰まることで口呼吸になると、鼻のフィルターを通さず直接喉や肺にウイルスが入ってしまうので、かぜやインフルエンザへの感染リスクが高くなります。また、いびきから睡眠時無呼吸を引き起こすと、脳や全身への酸素が不足して集中力が低下したり、疲れやすくなります。お子さんの場合には、身体の成長や学業に影響する可能性もあります。
鼻づまりの原因としては、炎症による粘膜の腫れ、良性のできものである鼻茸、粘り気の強い鼻水によるもので、疾患としては、かぜやアレルギー性鼻炎・花粉症、副鼻腔炎などがあります。お子さんの場合には、アデノイドと呼ばれる扁桃腺の一種が後ろから鼻の空気の通り道をふさいでいるケースもあります。なお、片側だけ鼻が詰まっている場合は、鼻の穴の左右を分けている鼻中隔が大きく弯曲している鼻中隔弯曲症であるケースが多くなっています。
くしゃみ
くしゃみが出るメカニズムは、鼻の中に異物が入った際に知覚神経が刺激され、異物を外に出すために起こる防御反射です。かぜやアレルギー性鼻炎、花粉症などでくしゃみが続くことがあります。鼻水、熱、目の痒み、だるさなどがあった場合には、鼻炎やかぜの可能性がありますので、悪化しないうちに早めの受診をおすすめします。
鼻の中が腫れている
鼻の粘膜が腫れる原因として炎症が挙げられ、炎症を起こす病気として慢性鼻炎やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎(蓄膿症)があります。また鼻茸が原因で鼻の中で腫れが起こることもあります。
鼻の腫れの原因となっている病気をしっかり診断した上で、各病気に対して適切な治療を行います
鼻の奥に違和感
鼻の奥の違和感(痛み、乾燥、鼻水など)がある場合、多くは上咽頭炎や副鼻腔炎(蓄膿症)が原因です。またアレルギー性鼻炎でも違和感が起こります。
CT検査や内視鏡検査などで鼻の奥の状態を確認し、炎症などの異常が起こっていないか詳しくお調べいたしますので、症状でお困りの際はお気軽に当クリニックへご相談ください。
鼻は通るのに匂いがしない
鼻は通っているのににおいが感じられない・感じにくい、また風邪は治ったのににおいがしないような場合、急性鼻炎、アレルギー性鼻炎、急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、鼻茸などの原因が考えられます。これらの鼻の病気だけでなく、昨今、感染が拡大している新型コロナウイルス感染症による症状の可能性もあると言えます。
においが感じられなくなる嗅覚障害の原因は様々ですので、適切な検査を行った後、各原因に応じて治療方針を立て、最善の方法で改善を目指します。
鼻の乾燥
鼻が乾燥することを“鼻乾燥(ドライノーズ)”と言い、急性・慢性鼻炎、アレルギー性鼻炎、萎縮性鼻炎などの鼻の病気が原因で起こります。
鼻が乾燥していると違和感や痛み、鼻づまり、鼻出血などの症状が現れるだけでなく、細菌・ウイルス感染のリスクが高くなりインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。
鼻血
鼻の粘膜には豊富な毛細血管があって、それが傷ついて出血を起こしています。外傷以外でも、特に思い当たる原因なく鼻血が出ることが多いです。高血圧では血管が傷つきやすく出血しやすい傾向があり、鼻内の腫瘍から出血している可能性もあります。比較的稀な疾患ですが、習慣性の鼻出血の患者さんの中には、オスラー病(遺伝性出血性毛細血管拡張症)による鼻出血の場合があります。当クリニックは、オスラー病による鼻出血の治療にも豊富な経験を有しております。
当クリニックでは、鼻出血の止血に、止血効果の高い最新の電気メスや手術用内視鏡などの最先端の機器を駆使して止血を行います。鼻血が続く場合は、当クリニックを受診ください。
鼻出血の止血には指で鼻翼を圧迫する圧迫止血が基本です
ティッシュなどを詰めて圧迫すると、ティッシュを除去した際に、再び出血することが多いためお勧めできません。お子さんの鼻出血は、アレルギー性鼻炎や風邪、その他の原因による粘膜のただれによるものがほとんどです。高血圧や動脈硬化などが原因となる血管の破綻による大人の鼻出血とは機序が異なります。電気凝固手術は粘膜のただれを悪化させるため効果がないばかりか鼻中隔穿孔のリスクが高いため、お勧めできません。