毎年、風邪の時期になると急性中耳炎になる方が多くなります。特にお子さんに多い耳の病気で、鼻風邪としてクリニックに通っていてもなかなか治らず、実は急性中耳炎なっていたということも多くあります。ここ数年で通年性のアレルギー性鼻炎にかかる方が増え、鼻炎が原因で耳の病気を併発することもあります。
しっかりと治療行わなければ慢性中耳炎や滲出性中耳炎を起こし、場合によっては難聴の原因になることもあるので注意が必要です。
耳の病気
急性中耳炎
中耳で炎症が起こったり、膿が溜まったりする病気で、お子さんに多くみられます。お子さんに多い要因として、大人の方と比べて耳管が短いことや、アデノイド(咽頭扁桃)が大きいことなどが挙げられます。
急性中耳炎をそのままにしていると、滲出性中耳炎や慢性中耳炎へ進展してしまう場合がありますので、耳の痛みや耳垂れなどの症状に気づいたら、早めに受診して適切な治療を受けるようにしましょう。
治療法
基本的に経過観し、必要に応じて抗生物質や消炎鎮痛剤などの内服治療を行って症状の改善をはかります。痛み・腫れなどの症状が強く、内服治療で治まらないような場合には、鼓膜に小さな穴をあけて溜まっている膿を排出する処置を行うこともあります。鼓膜の切開は外来で行えて、通常、通日程度で元通りに塞がります。
滲出性中耳炎
中耳の空洞(中耳腔)に滲出液が溜まる病気で、痛みや腫れなどの自覚症状がないため、発症に気づかずに受診が遅れがちです。そのままにしていると難聴に繋がる恐れがあるため、「テレビの音が大きい」「呼んでも反応しない」などの異変に気づいた時は、お早めにクリニックへご相談ください。
治療法
滲出性中耳炎は副鼻腔炎(蓄膿症)を合併していることが多いため、ネブライザー(吸入器)で鼻の治療を行うほか、抗生物質や去痰剤などを内服して鼻・喉の炎症を抑えます。
これらの治療で十分な改善がみられないようなケースでは、中耳腔に溜まった滲出液を排出されるために鼓膜を切開し、その後も再発を繰り返すようであれば鼓膜にチューブを挿入して滲出液の排出・中耳の換気を行います。
慢性中耳炎
急性中耳炎が治らず、鼓膜に開いた穴がそのままになった状態のことです。細菌・ウイルスがすぐに侵入してしまい、何度も中耳炎を繰り返すことになり、その結果、耳だれや難聴などの症状が現れる場合がありますので、異変に気づいたらすぐにクリニックを受診するようにしましょう。
治療法
抗生物質や消炎鎮痛剤などの内服治療で症状の改善をはかりますが、あくまで対症療法となり、根本的な治療として鼓膜に開いた穴を塞ぐ手術(鼓膜形成術)が必要になります。
真珠種性中耳炎
中耳炎の再発により鼓膜の一部が中耳へ入り込み塊(真珠腫)ができた状態で、炎症を起こし、まわりの骨を破壊しながら大きくなっていきます。慢性化膿性中耳炎と同様に耳だれや難聴などの症状が現れるほか、進行すると顔面神経麻痺や髄膜炎などの合併症を招く恐れがあります。
治療法
根本的な治療として手術が必要になり、鼓膜に開いた穴を塞ぐ手術、また鼓膜の形成などの治療を行います。これらは局所麻酔にて日帰りで受けることが可能です。
好酸球性中耳炎
鼓膜の奥にある中耳腔で粘度の強い液体が溜まる病気で、多くの場合、好酸球性副鼻腔炎や気管支喘息の合併症として発症します。はっきりとした原因はわかっていませんが、細菌やアレルギーなどが原因で血液中の好酸球が増加して起こるのではないかと考えられています。
40~50歳以上の女性に多くみられ、難聴や耳鳴り、めまいなどの症状を引き起こします。
治療法
好酸球性副鼻腔炎や気管支喘息の合併症として好酸球性中耳炎が起こっている場合、それらに対して適切な治療を行います。そのうえでステロイドの内服や注入、また必要に応じて鼓膜を切開したり、鼓膜にチューブを挿入して換気機能を改善したりするなどの手術を行います。
喉の病気
扁桃炎(扁桃腺炎)
細菌感染などが原因で扁桃腺が炎症している状態です。発熱や寒気、喉の痛み・腫れなどの症状が現れ、1年に何度も扁桃炎を繰り返すような場合には慢性扁桃炎と診断されます。
治療法
抗生物質や消炎鎮痛剤などの内服治療を行って症状の改善をはかります。
扁桃周囲膿瘍
喉の奥の両側にある口蓋扁桃と呼ばれる部分で炎症が起こり、膿が溜まっている状態です。
扁桃炎(扁桃腺炎)がさらに悪化した状態と言えます。様々な細菌・ウイルスが原因で起こり、重症化すると頸部膿瘍や縦隔膿瘍を引き起こして気道が閉塞してしまう場合があります。
治療法
抗生物質の投与で症状の改善をはかりますが、重症の場合には入院による点滴療法、また気道の確保が必要な時には気管の切開といった手術が必要になります。
咽頭炎
咽頭(上咽頭、中咽頭、下咽頭)で炎症が起こった状態で、細菌・ウイルス感染が原因で起こります。
喉の痛み、咳、声がかれるなどの症状が現れるほか、発熱や倦怠感など全身でも症状が現れることがあります。 進行すると気管支炎などを合併することがあるので注意が必要です。
治療法
抗生物質や消炎鎮痛剤などの内服治療を行って症状の改善をはかります。症状が進行しているケースではステロイドの吸引も行います。
喉頭炎
細菌・ウイルスのほか、喫煙や飲酒、喉の酷使などが原因で咽頭に炎症が起こった状態です。気温の変化や体力低下時などに細菌・ウイルスに感染すると起こりやすく、喉の痛み・違和感、嚥下痛(ものを飲み込む時に痛む)などの症状が現れます。
治療法
抗生物質や消炎鎮痛剤などの内服治療を行って症状の改善をはかります。症状が進行しているケースではステロイドの吸引も行います。
声帯ポリープ
声帯にポリープができた状態で、喉の酷使、風邪、喫煙など、粘膜で繰り返し出血が起こることで発症します。声がかれたり、低くなったりするほか、重症の場合、呼吸困難を引き起こすこともあります。
治療法
基本的な治療として喉の安静が第一で、お煙草を吸われる方は禁煙することが重要となります。また必要に応じて、消炎鎮痛剤やステロイドなどを使って症状の改善をはかります。
声帯結節
声帯に硬いポリープ状のもの(結節)ができた状態で、歌手や学校の先生など日常的に喉を使う職業の方に多くみられます。声のかれや喉の違和感、声が上手く出せないなどの症状が現れます
治療法
喉を安静にすることが一番の治療で、自然治癒が見込めない場合や、職業柄、早期の回復が必要なケースでは手術を検討します。